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Cymruのお喋り

Cymruのお喋り

RS異聞記 2

今まで嗅いだ事のない香り・・・

目を開けるとすぐ近くに天井?

「気がつかれましたか?」

”あの世か夢じゃねえよな・・・”

絵に描いたようなメイド姿の少女に微笑まれ
マートンは思わず自分の頬をつねる。

「痛っ;;」

おそるおそる起き上がる。

「なんだ、このベット、屋根ついてやがるぜ」

「まあ、お客様ったら。ただの天蓋付ベットでございますわ」
メイド姿の少女は快活に微笑む。

「お食事の用意が出来ております。
お召し上がりになりますか?」

自分が空腹だったことを思い出し、マートンは大きく頷いた。

ほどなく目の前に現れた豪華な食事。

「すげ・・・」

マートンは、揃えられたナイフとフォーク、スプーンは無視して
食べ物に喰らいついた。


「お館さまのお出ましでございます」

食後のデザートまで堪能し、腹を撫でていたマートンの目の前の
とんでもなく大きな扉が開き
胸に見事なペンダントを輝かせた
銀の髪の女性が現れた。


”なんだ、この婆さん・・・”チロリと一瞥

足元に突然現れたのはウサギ

”う、動けねぇ・・・”

「口の利き方には気をつけた方が身のためじゃぞ」

女性は楽しそうに言い放った。

「うるせぇ、まだ何にも喋ってねえよ!!!
オレに指図するな!ここはどこだ!」

「ここは我が屋敷。そなたはCymruから預かった」

「あ・・・」
”そうか、オレ、古都についたとたんに・・・”

「あの、ビショさんは?」

「彼女が御勤めをしている教会は男子禁制なのでな、
そなたを預けて仕事に戻って行ったわ」

足元のウサギが消えた。

さっきまで自分が寝ていたベットに思わず座り込み
深呼吸するマートン。

”どっかの信心深い金持ち老婦人ってとこか・・・
ま、いいや、とりあえず一晩宿代浮いたってことで
ずらかるか”

「世話かけちまったようだな・・・怒鳴ってすまなかった。
じゃ、オレ、行くから」

「どこへ行くのじゃ?」

「ん、ここ古都だろ?」

「古都上空ではあるが古都ではないな」

「はぁ?!」

慌てて窓辺に駆け寄るマートン。

四面楚歌ならぬ四面空・・・

背中から笑いをこらえているような声
「そなた、わらわがCymruに与えた指輪、盗んだようじゃな」

”やべ・・・”

「指輪代、それと・・・
ここの宿代も払ってもらおうかの
先ほどのルームサービスの分も含めて1億でよいぞ♪」

喜色満面でふうは言い放った。

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”・・・やっぱ運は賭場で使い果たしてたか・・・”

森でアンデットの仲間になっていた方が
ましだったかも・・・
マートンの脳裏にそんな想いがよぎった。

「そなたの持金は6000万ほどのようじゃな」

慌てて懐の財布を確認するマートン。

「そなたらと一緒にするでない。そのようなはした金に
興味はないわ」

ふうはメイドが運んできたイスに腰を下ろした。

「で、どうしろと?」
マートンは溜息と一緒に質問した。

「これは話が早い・・・そなた、わらわの下で働く気はないかえ?」

マートンはふっと目を細めた。
この部屋だけでもとてつもない金がかかっている。
なにより目の前の婆さんが身につけているペンダント・・・
鍛冶屋でもある彼には垂涎の的。

「報酬は?」

「ほう・・・仕事の内容ではなく報酬を問うか・・・」

「今更仕事を選べるような身分じゃないんでね」

ふうはにっこり微笑むと両の手を合わせ
手のひらを天井に向けた。

突然現れる水晶球。

「少々時間がかかりそうじゃ。お客人にお茶を」

その指示を予期していたかのように
マートンの目の前にお茶がセットされる。

先ほどはアッサムのミルクティーであったが
今度はミントのハーブティ。

数種類のプチケーキとサンドイッチ。

満腹だったはずのマートンだが
この状況に喉はカラカラ、体は糖分を求めていた。

”・・・さっきは気がつかなかったけど”

出されるものは総て彼の好物。

”ここ、やべえ”

「遠慮せんでよいぞ、それはサービスじゃ♪」

水晶を見つめたままふうが声をかけた。

マートンは深呼吸し、目の前のものを平らげ始める。
自分が何をしようが、どうにかなる相手ではないことを
彼は悟っていた。

どうせ・・・
あの夜に終わった方がましだった命
何が起きようが何をさせられようが
構わない。

それに

あのビショに興味があった。
自分とは真逆といってもよい存在。

なぜ、あんなふうに振舞えるのか・・・

Cymruにもう一度
会いたかった。

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「いろいろやんちゃをしたようじゃな」

お茶のカップを持ったまま
物思いにふけっていたマートンはハッと我にかえった。

「そなた、ワンコになれ」

「はあ?」

「古都あたりではそなたのような狼人間は”ワンコ”と呼ばれておる」

「・・・オレが狼になるのは満月の夜だけだぜ」

「ほれ♪」ふうが印を結ぶとマートンは狼人間に変化した。

「・・・ヲイ」

「そなたは本来こちらが主たる姿のはずじゃ。
ま、いろいろあったようじゃから、知らず知らずのうちに
その姿を抑圧していたのであろうが・・・」

豪華な部屋のシャンデリアの下で見る己の爪
毛むくじゃらの腕、足・・・

「そなたは村を救い、己の養い親を助けた。
その姿を呪う事はなかろう」

「婆ぁ、お前なんでそれを!」

再び足元に現れるウサギ。

「サイコロにメッセージが籠められておるのに
気がつかなんだか?」

「?!」

腰のベルトにくくりつけた小さい袋から
サイコロを取り出す。

黒曜石・象牙・ルビーのサイコロのうち
ルビーがひときわ輝き始めていた。

”ごめんね、マートン。あなたを守ってあげられなかった”

心に流れ込んできたのは養母の声。

”あなたのお母様はとっても強くて暖かい方でした。
私はあの方に憧れていつも後からついてまわっていました。
あの方が『これは私のお守りなの』
とおっしゃっていたこのサイコロに想いを託します。

村を守ってくれてありがとう。
家も田畑も人さえいればなんとかなります。
あなたがいてくれなかったら、今頃みんな・・・
なのにごめんなさいね。

私にとってあなたはいつまでも
可愛いマートン坊やです。
私の運を全部、このサイコロにエンチャしておきます。
あなたの本当のお母様がそうなさっていらしたように・・・
いつかまた、あなたを抱きしめることができますように。
私の愛しいマートン坊やへ”


光が消えた。


「そなたの父と養父は黒曜石にエンチャしたようじゃな」

「エンチャってなんだよ」かすれたような声でマートンが問うた。

「ハノブに家を用意させようぞ」

「ハノブ?」

「古都の隣の町じゃ。古都はそなたには住みにくいじゃろうて・・・
ハノブには腕の良い鍛冶屋がおる。ジム・モリという面白い奴もな」

「ジムモリ?」

「そなたが鍛冶屋の腕を磨き、ジム・モリと話をつけられれば
エンチャすることが出来るようになる」

「失礼いたします」大柄のメイドが大きな盆を捧げながら部屋に入ってきた。

「ギルドが出来てから、腕っ節さえあれば喰いぱぐれないという噂を聞きつけて、
どうにも柄の悪い者が増えてしまい収拾がつかなくなっておる」

自分もその1人であるのは自明の理。
マートンは内心苦笑した。

「やれ、紋章をつくるためだとか神像をつくるためだとか称して
今までは誰も近づかなかった場所にまでどやどやと踏み込む・・・
あまりの数に本来結界があった場所や封印されていたはずの場所が
暴かれてしまう有様じゃ」

ふうは自分の前にセットされたお茶に手を伸ばした。

「わらわの下で働けばこれを与えよう」

ふうが促すと盆を捧げたメイドがマートンに近づいた。

「ヒュ~♪」一瞥しただけで金がかかっていそうな装備。
特に爪はマートンが見たこともない代物だった。

「そなたが力を望んでおらぬことは知っておる。
相手を殺すことだけが戦いではないしな・・・
そなたの生みの親、育ての親の想いに加え、
そなたにより多くの運を授けよう」

ふうの手から水晶球がふっと浮き上がり
青白い光となってマートンを包んだ。

赤きサイコロに母と義母の運
黒きサイコロに父と義父の運
白きサイコロに調和を司るものからの運

運犬マートンが誕生した。
--------------------------------------------------------------
某国の地下深く。

特別の通行証を持つもののみが
一見、柱のようなポタを通り
来る事が出来る場所。

2m四方位の扉も窓もない
ただ、壁の一箇所が羽目板となっている
教会の懺悔室のような部屋。

「で、今度は何のやっかい事なんだい?」

手の中のサイコロをくるくると回し尋ねる。

「わらわがそなたにやっかい事など押し付けたことがあったかのう」
楽しげな声がかえってくる。

「はいはいはいはい」

マートンは溜息をついた。
枚挙に暇(いとま)がなさすぎて反論する気もおきない。

「今回はCymruと一緒じゃ」

懐かしい名前にマートンの表情がゆるんだ。
そもそもこの婆さんに捕まったのは彼女のせいではあるが・・・

「久しぶりだな・・・ビショさん元気かい?」

命を助けてもらったままお礼も言ってはいない。

「そなたと違いあの子は真面目で勤勉じゃ。
あれから自分の教会をもち、今では高位神官となっておる」

「余計なお世話だ!」
そういうマートンもエンチャ能力を身につけた
知る人ぞ知る職人になっていた。

「アリアンのはずれに”名も無い崩れた塔”があるのは知っておるか?」

「ああ」

「その塔の地下にあるらしい石を探してきてくれぬか」

「どんな石だ?」

「それはわからぬ」

「わからないのに探せるか!!!」

「大丈夫じゃ、案内(あない)してくれるものがおるのでな・・・」

---------------------------------------

「で、なんだこれは!!!」


σ(=^‥^=)カムロだじょ♪

~(= ^・・^)=o お手・・・じゃなくて握手だじょ♪

「ヲイ」(-_-X)

”そう見えても由緒正しきエンシェントドラゴンにあらせられるぞ、
失礼のないようにな♪”

「あの婆ぁ、いつかのしてやる」
叶わぬ思いと知りながら天に向かって毒づいてみる。



「ごきげんよう^^」

天使姿のCymruが現れ、すぐにビショに戻った。

「おっ」

「あら、カムロ、どこに行ったかと思えば
マートン様のお世話になっておりましたのね」

(=^‥^=)b

「ご無沙汰いたしております(涙目)」

丁寧な挨拶から流れるようにエビ、ブレをかけ
PTHを連打。
賛美すると立ち上がった。

首から聖印つきのお守りをかけ
ミスリルの鎧、スキュトゥム、棍棒と装備は変わっているが
雰囲気は森で会った時のまま。

とても高位神官には見えなかった。

「塔の入り口で待機願います。一度上まで登り
地下への転送機を作動させ地下3階くらいでコルさせていただきます」

「あ、ああ」

「相変わらず、コルが低くて・・・(泣)
申し訳ございません(大泣)」

”こんだけエビブレ高けりゃ、ビショとしては問題ないだろうが・・・”

とりあえず言われた通りに塔の入り口で待機。
合図とともに塔に入り、コルを待つことにした。


σ(=^‥^=)喰うじょ

入り口ポタ近くに着くや否や鞄をあけて座り込み
ケーキを食べ始める赤い生き物。

邪気のかけらも無いこれが
ドラゴンであることが到底納得できないマートンであった。

視線に気がついたカムロが顔を上げる。

(=^‥^=)v全部カムロのだじょ♪

「いや、いらないから・・・」苦笑しながらマートンも横に座る。

傍から見ると塔入り口で仲良くひなたぼっこの
ワンコとドラゴンであった。

---------------------------------------------------

”お待たせいたしました(涙目)
コルさせていただいてもよろしいでしょうか?”

頭の中にCymruの声が響いた。

マートンは立ち上がり、まだお口をもぐもぐさせている
赤い物体を引きずりながら塔に入った。

黴臭いよどんだような空気。
崩れかけた壁と傾いた柱。

”コルおね”

倒れてしまっている柱を
かすめるように蠢いているのはサソリ?
あんなのに噛みつかれたらただじゃすまないな。

などと思っている間に
これまた懐かしい闇に包まれた。

「って、お前、コルの間も喰ってるのか?!」

(=^‥^=)b


ゆっくりと視界が開ける。
マートンは、少々くらくらする頭を軽く振って
辺りを見回した。

足元に転がる瓦礫の山。
ワンコである彼の鼻を容赦なく襲う死臭。

耳を澄ませば骨がきしむ音が聞こえそうな位
アンデットの気配が満ちていた。

「骸骨の巣窟かよ・・・」

むせ返りながら顔をしかめるマートンを
涙目で見つめるCymru。

「あ、いや、そのうち慣れるさ」

フッと空気が揺らぎ、黒と茶の骸骨が湧く。

「ターンアンデット!」

間髪いれず詠唱が響く。
湧くと同時に消滅する骸骨たち。

「いいね~」マートンは低く口笛を吹いた。

(=^‥^=)b美味いじょ♪

「・・・お前、骸骨の落とした食いもんも喰うのか?!」

(=^‥^=)v全部カムロのだじょ♪

「ぜってぇ、いらねぇ!!!」

この状況下でおいしそうにケーキを頬張れる・・・
噂に聞くドラゴンとは確かにかけ離れてはいるが
こいつ、ただものではないとマートンは認めざるを得なかった。

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「この塔に地下があるなんてな・・・」

ポタを通過と同時に遭遇した骸骨を
Cymruが消滅させている横でマートンが呟いた。

「一度、最上階に上りませんと地下には降りられなくなっておりますから
なかなかわかり辛うございますわね(涙目)」

賛美しながら応じるCymru。

横で食べ物をあさるカムロ。

赤い方は無視と決め込むマートン。

「よく来るのか?」

「この次のフロアに、
ティマ様が好んでお連れになる”ファミリア”がおりますの。
ティムのお手伝いに何度か伺いました」

「噂の塔ファミか・・・」アリアンに運べば10万になるドロップだけを
ちゃっかりと懐に収めながら尋ねる。

「ファミさん、少々痛うございますので(涙目)
次のフロアのポタ前に、コルさせていただきます」

話している間に湧きなおした骸骨をまた一瞬で消滅させて
Cymruは走り出そうとした。

「あ、ちょい待ち」ウィザードに変身。
自分が移動するのに便利だからとマスターしたヘイストをCymruにかける。

「ありがとうございます^^」

「あ、いや・・・」ちょっと目をそらしてマートンはワンコに戻る。

すかさず飛んでくるフルヒール。
そのまま一連の動作でマートンとカムロにエビブレをかけなおし
Cymruは走っていった。

”どうせなら、塔に入る時にかけてやればよかったんじゃん
・・・って、何ガラにもねぇこと考えてんだオレ?!”

普段とは違う思考回路になっている自分に戸惑うマートンであった。

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「この先のフロアのモンスさんが石を隠し持っているそうでございます」

「倒さないと手に入らないってことか?」

「はい(涙目)」

「オレ、火力無いぞ」

今の装備でエンヘイかければ、そこそこ戦えるのだが、
どうもいつもと違う自分になんだか腹が立ち、
マートンはしらを切った。

ふうからもらったこの装備は、実のところ1億では安すぎる代物だった。

仕事の度に報酬をもらい、更に報酬分借金を減らしてもらえるという
そこそこおいしい話だったので文句を言いながらも
ふうの飼い犬状態。

が、余計な仕事はしないのが彼の主義。
”運に頼って楽して儲ける”が彼のモットー。

「この先も、アンデットさんと伺っております^^」

「なる・・・」

「私、運が全くございませんの(泣)
私だけでは石を持っているモンスさんに当たるまで
どのくらいかかるやら・・・(大泣)」

「わかったから、泣くなって!」

「ですのでリダをマートン様にお願いいたします」

「おけ」

”パーティリーダーの運が高いほどドロップがよくなる”

効果のほどはわからぬが冒険者たちの験かつぎである。

「石はカムロに見せれば本物かどうかわかりますわ」

v(=^‥^=)v

「・・・偉そうだな」

σ(=^‥^=)ノ エライじょ♪

”あの婆ぁといいこの赤いのといい・・・”
マートンは心の中で再び毒づいた。

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「話が違うじゃないか!!!」

マートンは思わず叫んだ。

確かに目的の”ぶつ”はアンデットが持っているのかもしれないが
イリュージョンと同じ数だけドゥームも漂っている。

「申し訳ございません(涙目)」

「あんたに謝られてもな!」

背に腹はかえられない。ウィズに変身し自分にエンヘイ。
自分が楽するためにCymruにヘイストをかけ、
チラリとカムロを見る。

”こいつはいいっか”ワンコに戻る。


「己がいるべき場所にお戻りなさい、その魂よ、安らかに。
あなたのために祈りを捧げます。ターンアンデット!!!」

Cymruの詠唱の前に煙のように消滅するアンデットたち。


残ったドゥームをマートンの牙と爪が切り裂き
カムロの炎が燃やし尽くす。

o⌒◇)<炎炎炎炎炎炎炎炎

「お、やれば出来るじゃん、赤いの」

v(=^‥^=)v

「・・・偉そうだな」

σ(=^‥^=)ノ エライじょ♪

”こいつとの会話は不毛だ・・・”
マートンは、心の中で大きく溜息をついた。


戦闘の合間、

床に散らばる戦利品の中から、
ケーキとキャンディーを拾い集め、大きく開けた口に次々と放り込むカムロ。

負けじと高価なものを選りすぐり鞄に収めるマートン。

Cymruはひたすらに賛美し、エビ・ブレ・ミラーをかけなおしていた。


σ(=^;;^=) ノド乾いたじょ

「あらあら、大変(大泣)・・・
マートン様、恐れ入りますが、氷柱いただけますか?」

「めんどくせいが・・・ま、いいか」
戦利品にごきげんのマートンは鼻歌まじりに答えた。

ウィズに変身。
親の形見の杖を振り、瞬間動きを止めると、
そこには3mにもなろうかという氷の柱が現れた。

「さすがでいらっしゃいますこと(感涙)
でも、この子がノドが乾いた時は、もう少し小振りのものの方が・・・」

氷が出現した途端、嬉々として火を吹くカムロ
流れはじめた氷水をおいしそうに飲み、また火を吹く。

巨大な氷柱は下の方が細くなり・・・

(=^‥^=)ノ倒れるじょ~~~~♪

地響きを立てて砕け散る。

「ぎゃ~~」たまらずテレポでよけるマートン。

Cymruはすでに安全な所に移動している。

「自分の氷柱に殺されかけたぞ!!!」肩で息をするマートン。

「次はもう少々、小さいものをお願いいたします」
何事もなかったかのように、おっとりと微笑みながら
とんでもないことになっているカムロの口の周りを
ハンカチで拭っているCymru。

(=^‥^=)ノ行くじょ~~~♪

エビ・ブレ・ミラーが一連の動作でかけられる。

元気になったカムロは先頭をきって走り始める。

ワンコに戻ったマートンは、
今度は全身で、大きく溜息をついてから
二人の後に続いた。

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石を見分けるのはたやすかった。

アンデットたちが消滅した途端、
小さな光る石が落ちることがあったが
そのいくつかはそのまま
吸い寄せられるようにカムロの鞄に収まっていった。

「おい、赤いの。その石、見せてくれない?」

好奇心にかられたマートンが尋ねたが


(=^‥^=)ないじょ!


「えっ?!」

カムロは自分の鞄をひっくり返す。

おせんにキャラメル、弁当にお茶~
ケーキにキャンディー、クッキーに花~
青ポ、赤ポ~バナナに~

「ってお前、ドロップ入る場所空いてないんかい^^;;;」


σ(=^‥^=)合体だじょ♪

そういわれてみれば
その石は鞄でなくカムロに吸収されているように見えた。


(=^‥^=)もう、いないじょ!

突然カムロがきっぱりと言い放つ。

「はい。マートン様、お疲れ様でございます」

「あ、ああ」

「帰還、お持ちですか?ここからですとエバキュ届かなくて・・・(涙目)」

「あ、あるぜ」

「ありがとうございました。それでは私たちはこれで・・・」

「あ、ちょい渡したいものがあるんだ。ハノブに来てくれないか?」

「はい、それでは銀行前でお願いいたします」

(=^‥^=)ノありりだったじょ♪

「まだモンスさんおりますので、お先にお戻りくださいませ」

うながされ、アリアン経由で鍛冶屋に挨拶してから
ハノブに戻った。

自室の棚の奥。
小さな箱に入れたレザーリング。
何度も失敗し、細心の注意を払ってボンドを使い
やっと仕上げたマートンの作品。

そっと箱を開け、中身を確かめると
ベルベットの布で丁寧に磨き上げ、もう一度箱に戻す。

”使ってくれるかな・・・”

柄にもなくどきどきしている自分に苦笑し
マートンは銀行前へと急いだ。

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「カムロ、大丈夫?(涙目)」


「護龍の民」の手を離れた「卵」もしくは「石」は不完全なまま孵化し
ドラゴンとは言い難い容姿と能力で、その命を落としていった。

彷徨える魂となった幼生たちは、
「護龍の民」たちの手で懸命に集められ、蘇生され、
かなりの数が再び「卵」もしくは「石」の形態に戻された。

それでもなお、
まだたくさんの彷徨える魂たちが依代を求めて
あらゆる次元と時代でカムロを待っていた・・・

この世界ではアンデットに姿を変えて。

すべてを受け入れる器であり続けることが
カムロの宿命。

(=^;;^=)ポンポン痛いじょ。

「今日はたくさんいたものね・・・」

右手でカムロの手を握り、左手で優しくそのお腹をさすりながら
Cymruは双の瞳からポロポロと涙をこぼす。

カムロの胸の辺りにそのしずくがかかると、
まるで痛みが引いたかのようにその表情が穏やかになり、
カムロはそのまま小さな寝息をたてはじめた。

”ゆっくりお休みなさい”
そっと手を離し、布団をかけなおすとCymruは立ち上がった。

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「お待たせいたしました」

古都やアリアンなどの銀行前はいつも人でごった返しているが
ハノブは閑散としたものである。
Cymruはすぐにマートンを見つけた。

「ん、赤いのは?」

「申し訳ございません(涙目)
カムロは具合が悪くて・・・(泣)」

「怪我でもしたのか?」

「いえ・・・食べすぎと申しますか・・・
吸収しすぎと申しますか・・・(大泣)」

「・・・なるほど」

「先刻は大変お疲れ様でございました」

「おつ♪」

「後から参りまして申し訳ございませんが、
カムロの様子が心配ですの(涙目)
大至急ふう様にご報告してからなるべく早く戻りとうございます(泣)
マートン様のご用は?」

「あっ、じゃ、オレがあの婆ぁに報告しとこうか?」

「まあ・・・よろしいのでしょうか?」

「オレは暇だから気にするなって」
”って、なんでオレがあの婆ぁに?!・・・ありえん、どうしたオレ!”

「ありがとうございます(感涙)」

「それくらいで泣かなくていいから^^;;;」
必要以上に明るく言い放つとマートンはズボンのポケットを漁った。

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「ほぅ・・・そなたが報告に参るとはな」

某国の地下深く。

通行証を持ち、一見、柱のようなポタを通らなければ
入ることが出来ない例の場所にマートンが現れると、
ふうは天使へと姿を変え、彼を天空の屋敷に拉致した。

「ヲイ、婆ぁ、オレはそれほど暇じゃないんだ!
勝手なことするなよ」

わめくマートンに椅子を勧め、
元の姿に戻ったふうは、自分用の椅子にゆったりと腰を沈めた。

「どういう風の吹き回しか、聞かせてもらおうかのう」
ふうは目を細めると、マートンを見つめた。


”こっちが聞きてぇよ・・・”

Cymruに出会ったとき、成り行きでくすねた
HP効率+10%のただのレザーリング。


最近はあちらこちらで”ジン”と呼ばれる
今まで以上に凶暴なモンスターが出現し、
ビショップのブレッシングやアーチだけでは
様々な状態異常にかかるということで
たくさんの冒険者がマートンのところに
指輪に抵抗をつけて欲しいと依頼してくる。

それならばと
くすねたリングにも抵抗をつけて
Cymruに返してやったのだが・・・

”まあ・・・どこかで失くしてしまい、諦めておりましたのに・・・(涙目)
マートン様が拾得して下さっていらしたなんて(泣)
それに・・・低下系抵抗がこんなに・・・(感涙)
ありがとうございます。本当に助かりますわ(大泣)
でも、エンチャってお金がかかりますでしょう?”

”あ、オレ、職人なんだ”
Cymruが高位神官になっていると聞いたときは
ボンド代位はせしめるつもりでいたマートンだが
”あんとき助けてもらったお礼だ、やるよ”
思わずそう言ってしまった。

”ありがとうございます(涙目)”

もう少し話していたかったが、カムロのこともあり
マートンはそれでCymruと別れ、あの場所に赴いていた。


「そんなの知るかよ。
とりあえず、あの赤いのが欲しがっていた石だかなんだかは
回収したらしいぜ・・・
モンスターより、あの赤いのに殺されかけたがな!」

「御子は弱っておられるのぅ・・・」
ふうは首のペンダントの赤い石をまさぐると呟いた。

「えっ?・・・あいつ、そんなに悪いのか」

ふうはお茶の支度をさせると、
優雅な手つきでカップを手に取り一口飲んでから
マートンに視線を移した。

「そなたには話しておこうか・・・『赤き龍』と御子のことを」

---------------------------------------------------

いつともわからぬ、ドラゴンとして蘇る日まで
その身を依代として彷徨える魂を集め続けなければならない宿命。

「御子は我々にとっても希望じゃ・・・」ふうは深い溜息をついた。

人をくったような容姿や言動とはかけ離れたカムロの運命に
マートンは言葉を失った。

”オレなんか、赤いのに比べりゃ・・・”

「御子はそなたを大層お気に召したようじゃのう、またよろしゅう頼む」

「赤いの・・・いや、カムロはよくなるのか?」

「御子の消化吸収能力を見くびってはならぬぞ」
ふうはにっこりと微笑んだ。
「しかも治癒と回復のエキスパートが、つきっきりで看病しておる」

「だな」つられたようにマートンも微笑んだ。

「ほう、そなたも笑うのじゃな」

慌てたように咳払いをして誤魔化すマートン。

「よきことじゃ」ふうはバラブリスを口に運びながら
もう一度微笑んだ。


「お館さま・・・お話中申し訳ございませんが・・・」
侍女頭がそっと近づき声をかける。

「おお、来たか来たか・・・」
いそいそと立ち上がり、部屋を後にするふう。

1人残されるマートン。

「って、おい、婆ぁ、オレを戻せ!!!」

ここは空の上・・・

「てめえ、本当にぶっ殺すぞ!!!」

と、突然、部屋の真ん中に
ハノブへと繋がる、タウンポータルが開いた。

「げっ・・・」恐る恐る覗いて見るが・・・
本当に大丈夫かこれ?

”いつもと同じものだ、早く入れ!”

どこからか男の声。

「誰だ!」

”消えるぞ、2個目は作らんからな”

マートンは舌打ちをして、辺りを睨んでからポータルに飛び込んだ。

-------------------------------------

「やれやれ」

タウンポータルが消えると、不可視の指輪をはずし
ルンは大きく伸びをした。

本来姫である”ふう”が天使に姿を変えるカラクリ。
この指輪をはずし姿を現したルンに
武器変身で一体化、おのれが天使のように振舞う。

このルンが護衛天使の末裔であるため
ふうは護衛天使たちの動向を知ることが出来た。



ふうが、ここの新たな主となったあの日。

天空に輝いていた太陽は闇色に包まれ
空気は凍りつき
羽をもがれた、たくさんの天使が
地上へと突き落とされた。

天使たちが住む地と
地上との間にあるここにも
何十という天使が・・・
その日から追放天使と呼ばれる者たちが
落ちてきた。

心と体に大きな傷を負って・・・


目の前に傷ついた者がいるのに放ってはおけまいと
この異変に動揺しながらも必死で天使たちを
救助したティルアノグの民たち。

やがて、ティルアノグの民の前に姿を現した
新しいお館様である”ふう”は
追放天使たちの滞在を許し、
男手のないこの国の警護等の仕事を与えた。


それから何代過ぎたのであろうか・・・


その時代、時代に天使たちの中から選ばれる
戦闘能力、状況判断力において卓越した存在として
天使たちを束ね、ふうを護る者。

光栄な役回りである。
はずなのだが、

「あのワンコと私とではさしたる違いはないかな」

苦笑しながらルンは傷ついていない翼を広げた。
飛べない翼・・・普段はこんな風に広げる事もない翼を
髪を梳くように撫でてみる。


あの日---

ふうがDiolch誘拐の件で呼び出され退出したのち、
カムロの警護もかねて不可視のままこの部屋に残っていたルン。

カムロが突然むくりと起き上がり、

”σ(=^‥^=)カムロだじょ♪”

”ん、私が見えるのか?”

”(。・_・。)ノよろしくだじょ♪”

”さすが、由緒正しきエンシェントドラゴンの幼生ということか・・・”

”~(= ^・・^)=o 握手だじょ♪”

挨拶をすると彼の翼をそっと触り

”(=^;;^=)σ痛いの痛いの飛んでけぇ~だじょ;;

そう呟いて一礼し、再び眠りについたカムロ。


「カムロ、早く良くなるといいんだが・・・」

ルンは窓の外を遠く見つめて呟くと、指輪をはめた。

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「なんか抹香臭い街だな・・・」
おのぼりさん丸出しでキョロキョロとしながら
アウグスタの中央広場に立っているのはマートン。

あの後、無事にハノブに戻れたのだが、
カムロのことが気になって仕方がない。

溜まっていた鍛冶屋の仕事を片付けて
さあ、カムロの見舞いへと思ったが、
どこにいけば会えるのかわからない。

ふうに聞くのはなんとも悔しく
古都まで出向き、大陸中から人が集まる安酒場で情報収集すると・・・

”泣き虫の高位神官”のことは誰も知らなかったが
”身長70cm、胴回り60cm位、
でっかい口を開けた、喰い意地のはった赤い生き物”は
知らない者がいなかった。

「そりゃ、赤いちんちくりんだ」
「あいつぁ、赤い恐竜だろ?」
「いや、ありゃトカゲだろ・・・」
「カ・・・なんとかだじょ♪っていうやつだろ」

カムロと
漁に行った。
市場で屋台を出した。
猟をしてたら猟犬より先に獲物をくわえて来た。
畑で収穫をした。
村の運動会でパン喰い競争をした。
等々
誰もが楽しげにカムロのことを口にする。

”全部食い物がらみなところが・・・さすがだ”(-_-;)

神聖都市アウグスタに行けばカムロに会える。

そう聞いて、マートンはテレポーターと呼ばれる奴に
金を握らせ、アウグに飛んだ。

”思ったより広ぇなぁ”少々心細くなったが
折角ここまで来たのだ、意を決して・・・

”まずは見舞い用の喰いもん探しだよな”

マートンは腰の袋からサイコロを出しポンと投げると
片手で受け取り手を開いた。
”ほい、こっちね”
そのまま手の中でサイコロを操りながら歩き始めた。


ほどなく漂ってくる様々な匂い。
マートンのサイコロは市場への最短ルートを教えてくれていた、

というより・・・

いきなり尻尾をつかまれ、振り向きざまに

~(= ^・・^)=o お手だじょ♪

「ヲイ」(-_-X)

「おや、そこのワンコ、カムロの知り合いかい」

店番をしている女たちから声がかかる。

「あ、いや」

(=^‥^=)σマートンだじょ♪

「そうかい、じゃ、これ食べてきなよ」

もともと試食用なのではあろうが、次々と差し出される食べ物。

カムロは片っ端から平らげてゆく。

「お~い、カムロ、こっちに火、頼むよ~」

なにやら焼いて売っている屋台から声がかかると
すっとんでいくカムロ。

「カムロの火はあたりがやわらかくていいねぇ~」

σ(=^‥^=)ノ エライじょ♪

「ああ、エライエライ」市場に笑い声が響く。

カムロも嬉しそうに尻尾を揺らした。

「お前、体、大丈夫なのか?」かがんで聞いてみる。

σ(=^‥^=)ノ元気だじょ♪

「そ、っか」マートンは深呼吸すると立ち上がった。
「よかったな」頭をいーこいーこ。
カムロはまた嬉しそうに尻尾を揺らす。
マートンも思わず微笑み、
う~んと伸びをしてサイコロを袋にしまう。

「じゃ、オレ帰るわ」
両手を頭の後ろに組むとくるりと踵を返し、歩き出した。

と、背後からドドド~っと
走ってきたカムロ。
(=^‥^=)ノありりだったじょ~♪
手にしていたものをほいっと渡すとまた
ドドドドド~っと戻っていった。

”あいつ、オレが見舞いに来たことわかってるのか?
・・・で、これはその礼とでも・・・”

手の中の見事な「骨」一本を見つめながら
マートンは周りが驚くのも気にせず
大笑いしていた。

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”孫は来るときと帰るときが一番可愛い”

彼女が到着したときは
マートンがいることも忘れて迎えに飛び出したふうだが、

「昔の人はうまいことを申したものじゃ・・・」

今は溜息しかでない。


代々この国の主を輩出してきた
ふうの一族の血を濃く継ぐ者

その1人Diolch。通称”ディオ”
孫というより遠縁にあたる者という関係だが
ふうから見れば13歳のディオは正に孫のようなもの。

事情があり地上界で生まれたにもかかわらず
彼女はここの記憶を持っていた。

「ディオ、もう帰る~~~ここつまんない!!!」

朝っぱらからうそ泣きで周囲を困らせ
怒られると死んだふり。

ふうが叱ろうとすると
ウサギ変身であっという間に逃げてゆく。

いつもなら、飽きたら帰していたのだが
今回はそうはいかなかった。

カムロと同じドラゴンの一部である幼生の
母となる契約を結んだディオ。

その幼生がやむにやまれぬ状況で
ディオの生命力を使いドラゴン本来の力を発揮した。

そのために失われた生命力を
ふうの側にいることで取り戻させなければ
ディオの命が危ない。

「困ったのぅ・・・」

透明なままふうの背後に控えていたルンが含み笑いをしながら
囁いた。

「戦闘能力は必要ございませんし・・・
マートンを呼び出してはいかがでしょうか?」

「ディオの子守をあやつが引き受けるとは思えんがな・・・」

「Cymru様とカムロもお呼びすれば・・・」

「なるほど、それは妙案じゃ」

ふうとルンは顔を見合わせてにっこり微笑んだ。

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朝、郵便受けに入っていた手紙。


はぁ~い、マー君~元気してる~?

あ、悪い予感してるでしょ?
あったり~~~

でもね、でもねCymruとカムロが一緒だよ(はあと)

やるよね?ね?ね?

答えは聞いてない。

じゃ、いつものとこで待ってるよ~~~ん(はあと)



特徴のある文体。
署名などなくとも
差し出し主のわかる手紙。

マートンは腰の袋からサイコロを出しポンと投げると
片手で受け取り手を開いた。

「・・・だよなぁ・・・」
サイコロは行くなと示す。

でも・・・

と、マートンの前に突然Cymruとカムロが現れた。

「ごきげんよう、マートン様^^」

~(= ^・・^)=o お手だじょ♪

「・・・って、おいカムロ」(-_-X)

「ふう様のお言いつけでお迎えにあがりました」

にっこりと微笑まれ、つい、

「あ、今すぐ行くから」と答えた自分に腹が立つ・・・
”ったくあの婆ぁ・・・いつか・・・”

虚しいこととは知りながら
いつものように毒づくマートンだった。


「おお、よう来てくれたのぅ」すでに部屋で待っていたふうは
立ち上がって3人を迎えた。

”まじ、やばそうだ・・・悪寒までする・・・”

いつもなら勿体つけて後から部屋に入ってくるこの婆ぁが
出迎えだと?!

「お待たせいたしました(涙目)」

「よいよい^^御子はご機嫌麗しゅうございますかな?」

σ(=^‥^=)ノ元気だじょ♪

「それは大慶・・・」

と、扉が開き、
3人の足元になにやら白いものが跳ねた。

、., ⌒ 、., ⌒ 、., ⌒ 、., ⌒ 、., ⌒ 、., ⌒ /( =゚ェ゚=)ヽ ピョンピョン
ピョンピョン /(=゚ェ゚= )\ ⌒ 、., ⌒ 、., ⌒ 、., ⌒ 、., ⌒ 、., ⌒ 、.,


「ん?」

「あら・・・」

(=^‥^=)σ ピョンだじょ♪

「ディオだもん」

目の前に現れたのは白いドレスに身を包み
蝿殺しと呼ばれるスリングを手にした女の子。

「Cymru、お久し振りね^^
そこのワンちゃん、お手。
トカゲはお座り」

「ごきげんよう、ディオ様」

「ヲイ、なんだこの餓鬼?!」

σ(=^‥^=)トカゲさんじゃないじょ、カムロだじょ♪

「ディオ様でございます^^」

きらきら光る大きな瞳。意志の強そうな口元。

・・・
・・・
・・・

似ている。

あの婆ぁにそっくりだ。
自分の悪い予感が的中したことを確信し、
マートンは天井を仰いで溜息をついた。

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なぁ~んだ、この犬、お手もできないんだ、つまんない!!!」

「この餓鬼、のすぞ!」

「ふぅんだっ!」

殴りかかろうとしたマートンをCymruが制した。
「まだ、お小さくていらっしゃいますから(泣)」

「あんたが泣かなくても・・・」戦意喪失。

「御子もドラゴンであらせられるぞ」ふうが声をかける。

「ふう~~~ん・・・そういえばうちの子と似てるかな・・・」
カムロのことを観察。

σ(〃▽〃)照れるじょ

「うん、うちの子の方が可愛い!」

(=^;;^=)

「泣くな、カムロ」思わずカムロの手をとるマートン。

(=^;;^=)ありりだじょ;;

「あ~~~あのワンコ、ドラゴンにはお手してる~~~」

「・・・やっぱ、殴ったろか・・・」(-_-X)

が、涙目で自分を見つめているCymruの視線が
痛い。

「ディオと御子とマートンは馬が合うようじゃな^^」

「・・・この状況のどこが!!!」

「大慶、大慶^^」背後のルンに手で合図をしてから立ち上がると
ふうは部屋を後にした。「Cymru、こちらへ」

「かしこまりました」Cymruが後に続く。


部屋に残ったのは

ディオ、カムロ、マートン。

「外野がいなくなったな・・・このくそ餓鬼、覚悟しろよ」

構えたマートンの前でウサギ変身。
扉の外に飛び出し、
廊下で護衛に当たっていた追放天使の一人、
ガディの肩に飛び乗った。

「ディオ様、どうなさいました?!」

「あの犬がいじめるの;;」

追いかけて廊下に出ようとしたマートンに
両側からホールドパーソン。

σ(゚┰~ )「あっかんべ~~~ぇ~~~だ♪」

ピョンと廊下に降り
もとの姫の姿に戻ったディオは
ただですら大きな瞳を更に大きくし
キラキラと笑った。

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お邸の会議室には重苦しい空気が漂っていた。

「ふむ・・・ではCymruには飛べぬということか」

「はい(涙目)申し訳ございません(泣)」

「距離から申せばCymruのスキルであれば十分なはず・・・」

「私の隊の者に確認いたしましたところ全員が飛べるようでございます」
ルンは手元の資料に目を落とし告げた。

「・・・(大泣)」


この国にいる天使は大まかに3種類の職務を担っていた。

第1はルンを筆頭とする親衛部隊。
いうまでもなく戦闘に特化した能力を誇る。

第2はガディを筆頭とする移動部隊。
エバキュエイション、コーリング、タウンポータルに特化した能力を誇る。
隊長クラスになると
アリアンからブリッジヘッドまでたった一度のエバキュで移動が可能である。
ふうが大陸のどこにいても特殊な空間で無い限りこの天空邸にコール出来る。
タウンポータルにいたっては14個並べて遊ぶことも出来る。

最後はエゥリンを筆頭とする事務部隊。
武器消耗品備品の管理等総務部門を統括している。
天使というよりむしろビショップの能力が高いものが多く
この国の防衛ラインという側面を持つ。


「ガディからは3名、エゥリンからは1名が飛べるとの報告が
入っております。以上から推察しますと・・・」
ルンはチラリとCymruを見、少々気の毒そうに告げた。
「やはり、戦闘能力が高いものは飛べるということでしょうか」

「・・・(号泣)」


ふうの手の者がもたらした情報。


荒廃都市ダメル

その名の通り
都市自体が廃墟といっても過言ではないダメルは
この大陸に張り巡らされている都市移動システムの範囲外。

しかも
足を踏み入れた者の方向感覚を奪う魔の砂漠が都市を取り巻く。

大陸の中でも寂れた都市であったが・・・


最近、この都市をたくさんの冒険者が訪れるようになっているという。

その大きな要因が
一部の追放天使たちのエバキュが、ここダメルに届くようになったこと。


都市そのものが他者を拒んでいるようであったのに
一体何が起こっているのか?

この都市の酒場で怪しい者が
冒険者たちを集め、何やら画策しているという噂もあるが・・・


「記録ではたった一晩で廃墟となり、忘れ去られた町となっておるが
何があったのかは全くわからぬ・・・」

「それが突然、冒険者たちを集めはじめた。しかも
恐らくは腕の立つ者を・・・ということでしょうか?」

「・・・(超号泣)」

「先日数名を探索に送りましたが・・・特別に変わった所はなかったとのことです。
ただ・・・」ルンは言いよどんだ。

「何じゃ?」

「ご報告するほどのことかどうかはわかりませんが・・・
町を探索しただけで疲れきって戻ってまいりました」

「そなたの隊の者が歩き回っただけで疲労困憊したと?・・・
やはりすておけぬな」ふうは溜息をついた。

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”カムロのペースにはついていけないが”

マートンはキャンディーシャワーですっかりてなづけられ
お座りをしているカムロを気の毒そうに眺めた。

”あの餓鬼は更に上手だ・・・”

「はい、カムロ、よく出来ました(はあと)」
しゃがみこんでカムロにキャンディーを渡す。

(。・_・。)ノ 飴ちゃん、ありりだじょ~~

”・・・で、お前にはエンシェントドラゴンとしての誇りはないのか?!”
両足を投げ出して床に座り、一心にキャンディーを舐めているカムロを見てマートンは右手で顔を覆い溜息をついた。



「お館様、おでましにございます」

部屋の扉が開き、ふうとCymruが戻ってきた。

「おかえりなさいませ」ディオは笑顔で出迎える。

「良い子にしていたようじゃな」ふうは満足そうに微笑みかえした。

「ディオ様、そろそろレッスンのお時間でございます」
ふうに付き従っていた侍女頭が声をかける。

えっ~~~/(=;x;=)\

「我儘を申すでないぞ」

「はぁ~い」

”我儘しか言ってないと思うが・・・”
内心滝汗のマートン。

侍女たちに促され、ディオは立ち上がった。

「ねぇねぇ、ディオのダンスシューズの紐、換えてある?」

「はい、ディオ様、お選びいただいたピンク色のものに
交換してございます」

「わ~~~い、ありがと(はあと)」

ふうとCymruに挨拶してから
ディオはチラリと振り返ってその大きな瞳を泳がせた。

「あ・・・」

マートンと目が合う。

「んっと・・・カムロ、また遊んであげるね」

(=^‥^=)v遊ぶじょ♪

「マートンお兄ちゃん、ありがと、バイバイ~(はあと)」

”えっ?!”

扉がパタンと閉まった。

(=^‥^=)σマートン赤いじょ♪

「るせぇ!!!」

「ご苦労であった。礼を申すぞ」

ふうはお茶の用意を命ずると椅子に座った。
「良い子なのじゃが・・・少々元気がよすぎてのう・・・
また、相手をしてやってたもれ」

「なんでオレが?!」

「ディオが好いているようなのでな」
運ばれた来たお茶をおいしそうに飲むと、ふうはにっこり微笑んだ。

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「お疲れ様でございました」

「いや、まじ疲れた・・・なんだあの餓鬼」

ハノブに戻った3人だったが、遊び疲れたカムロがうとうとし始めたためマートンは2人を自宅に招き、カムロをベットに運んでやった。

「素直な良いお嬢様でいらっしゃいますわ」

”Cymruの前ではそうだろうな・・・”

妙に納得しながら、今日の報酬をしまいこむ。

「あ・・・うち、酒しかねぇや・・・」

「どうぞお構いなく。
先程ふう様のところで、お茶をいただいたばかりですから」

「じゃ、オレは失礼して」

アウグ産のワインを開けるとビンのままノドに流し込む。

「ふぅ~生き返るぜ」
手の甲で口を拭い、手近の椅子にどっかりと座った。

「失礼してよろしければ何かおつまみを作らせていただきますが・・・」

「まじ?!」

「はい^^」Cymruは立ち上がるとニッコリ微笑んだ。
「冷蔵庫とキッチン、拝見してもよろしいですか?」

「あ・・・なんか入ってたかな・・・」
頭をかきながら自分もキッチンへ足を運ぶ。

「うっ・・・」冷蔵庫の扉を開けて、慌てて閉じる。

「どうかなさいました?」

「あ・・・いや・・・その・・・材料になりそうなものは
何にも無くて・・・あの・・・」

しどろもどろのマートンの瞳をじっと見つめると
Cymruは迷わず冷蔵庫を開ける。

「ええっと・・・骨・・・でございますわね(涙目)」

マートンは視線を宙に浮かせると後ろを向いた。

「見事な豚骨でございますこと(感涙)」

「いや、そこ(感涙)するとこじゃないと思うぞ」
振り返ったマートンはCymruと目が合うと、思わず噴きだした。

「失礼いたしました(泣)」

「だから泣くなって^^;;;」

「ダシ、とられますの?」

「いや・・・」

マートンはアウグに出向きカムロと市場で会ったことを
話し始めた。


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